切削加工事例

MACHINING EXAMPLE

突然の電話、もしかしてクレーム??

「何をしたんだ!」
それは取引先(A社)の社長様からの電話でした。突然の電話にビックリしたことを覚えています。

私は当初何を言われているのかまったくわかりませんでした。「最近A社に納品した製品はないはずだが・・・」「以前の取引に何か問題でもあったのだろうか・・・」。営業が苦手な私としては、誰かに応対を任せたい気持ちになりました。

しかし社長様は続けます。
「どうしてうちより遅く始めたのに、納期に間に合ったんだ!」
「今から、おたくの工場に行く」
その言葉を聞いて、「もしかして…」と私はその日に納品した製品のことを思い出しました。

1週間、80個、@8000…割に合わない仕事というけれど

車両部品スケッチ
車両部品スケッチ

先日、B社様から急ぎの注文がありました。

依頼された仕事はA5052アルミ板から形状を切り出し加工するというもの。ワークサイズはT20*600*200で、780*300の大きな板から2個取りする加工です。

B社社長様によると「納期は1週間。すでに他社に依頼している製品だが、他社だけでは納期に間に合わない。NCプログラム、治具、刃物、材料 すべて支給するので加工してほしい。必要個数は80個だが、出来る数だけ加工してほしい。できない分は自社で加工する。単価は1個8,000円で、加工時間を考えたらとても儲からない仕事で申し訳ない。」とのことでした。

そして、LRの2種類(80個×2)ある加工品の内、L部品が弊社に注文されました。

無理な力技でなく、設計・準備を改善することで効率化に成功

それに対し私共の生産目標は、「予算内で」「納期を守る」こと。確かに簡単な仕事ではないが、何とかなるだろうという自信がありました。

治具の設計データ、他社で加工していたNCプログラム、製品の3Dデータ、特殊形状の刃物を支給してもらい、作業を開始しました。

まずは支給された3DデータよりNCプログラムを弊社で作成しました。他社のNCプログラムが弊社の機械に合うか検証するのに時間がかかりそうだったのです。治具プレートも支給データを参考に自社工程用に製作しました。

次に表加工→裏加工の2工程で加工しました。外側の輪郭に極細のリブを残し、最後に小径エンドミルにて切り落とし、切り落としのバリを軽くヤスリで舐めて完成させました。

納期を早めるために2台の機械を使い、1台目で表、2台目で裏を加工させました。表加工60分、裏加工35分の加工時間で製作し、2個取だったので脱着、バリ取り含めて1個約40分でできあがる計算でした。

「よし、これなら納期に間に合う!」
私は1個目を制作した時点で、B社社長様に電話を入れました。
「弊社なら、納期内にL部品を全数80個加工できそうです」
最初は信じてもらえず、何度も念を押されました。しかしついにはL部品全数の加工を依頼していただくことができました。

納品直後の電話と突然の会社訪問

作業は大変でしたが、その後何とか全数完成して、無事納品も終えました。冒頭のA社社長様からの電話があったのは、その直後でした。

詳しく話を聞くと、実はB社様が最初に依頼した「他社」がどうやらA社様だったようなのです。しかしA社様だけでの加工では1週間の納期に間に合わず、B社様は慌てて別の加工屋を探していらっしゃったとのこと。そこに白羽の矢が当たったのが弊社でした。B社様は弊社とは初めての取引で、「最悪、塚原でダメでも自社でやればいい」と、駄目元で弊社に依頼したと後日B社社長様に言われました。

ところが後から着手したはずの弊社がA社様より早く納品してしまい、それにおどろいたA社社長様が電話をかけてきた、ということだったのです。

冒頭の電話から1時間もせずに、A社の社長様と工場長様が来社されました。A社社長様はありえないといった様子で、
「1個1時間以下で加工できるなんて信じられない。どうやってやったんだ」
と問われました。

私は製作工程を素直にお答えしました。

「今回の場合、他社では、1工程目:取り付け穴加工、2工程目:表面加工、3工程目:裏面加工、4工程目:リューターで表裏の繋ぎを切断、切断面の整形磨き作業、という工程で行っていたようです。弊社では表加工はバイスでクランプし、取り付け穴と表面を加工、取り付け穴で治具プレートにクランプして2工程目で裏面加工、3工程目で微小リブの切断跡をヤスリで整形しています。」
塚原製作所としては、当たり前の作業で特別なことはしていないはず。こんな返答で納得してもらえるのだろうか、と不安にもなりました。

お褒めの言葉

私の話を聞き終えたA社社長様は、「1時間を切れるとは思っていなかった。秘訣を知りたい。工場を見学させてほしい」と工場内を見学して回られました。

A社社長様は弊社工場内を一通り見ると、「へぇ~、面白いね。ドリル加工、ポケット加工、溝加工、クランプ段取り、全部がちょっとずつ速い。これといった1個の理由があるわけじゃないが、いろんなことの積み上げで作業を効率化しているようだ。塚原製作所さんには、複雑な加工を、予算内で納期を確保する技術力があるということだね。」とおっしゃられました。

そしてそれから数時間後、今度はA社様から話を聞いたB社様の工場長が若手社員と一緒に弊社の工場見学に来られたのです。さらにB社社長からも電話があり、「こんなに短時間でできるとは思わなかったよ。時間がかかって儲かる仕事ではないと思っていたからね。私も無事納品を終わらせることができた。納期に間に合って本当に助かった。」とお褒めの言葉をいただきました。

塚原製作所の強みは「時間がかかる加工を他社が驚くほど早くできる」ことです

自社の強みはどこにあるかわからないものです。実はそれまで私は自社の強みについて、「こんな技術はあって当たり前」「上には上がいる」「自社に強みなんて何もない」と思っていました。

だから、打ち合わせに行っても、アピールすることができませんでした。もちろん私が営業下手なこともあるのですが…技術には上には上がある、ことを痛感しているからです。

ですがこの経験によって、塚原製作所の強みが「時間がかかる加工に対して、予算内で納期を確保する」ことだとわかったのでした。

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